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yuuの一人芝居

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創作秘話 「現代水軍伝」

創作秘話 「現代水軍伝」 2016/8/7

 この作品を書く動機は、水島が企業公害でぜんそく患者が激増して年寄りや幼い子がなくなっていた時に、公害撲滅を掲げ闘争をしていた経験から生まれたと言えよう。また、石油会社がオイルの流出で瀬戸内海が汚染されて、瀬戸内海が死の海になるのではないかと言う騒動が、事件があったことも起因している。
 其の頃工場の何十という煙突からは五十メートルと言う炎が水島を明々と照らして燃えていた。夜でも新聞が読めるという状況だった。水島灘で獲れた魚は臭くて食べられなく、漁師たちはそれを岡山県庁の玄関にぶちまけて筵旗を掲げて抗議した。企業の排水溝にセメントを流し込む、其の計画が盛んに検討されていた。反対デモは日増しに盛んになり、全国の市民団体が応援に押し寄せてきてくれた。
 そんな中、公害反対の闘争をしていた私にもやくざと警察の監視がついた。
 企業は毎晩のように爆発を起こし地なりの様な響きが夜空にこだましていた。
 どこの政党もなにもしなかった。むしろ邪魔をした。
 この作品はそのさなかに書きあげたものだ。
 かつて、瀬戸内海で海賊として活躍、奪略をしていた水軍たちに解決策を委ねると言うものだ。
 因島の村上水軍、本島の塩飽水軍の末裔たちが瀬戸内海浄化に命を張ると言うものを書きあげた。
 これは若かったころの作品で表現、構成に不備があるがそれを推敲することなく載せた。其の頃の私の心情を行間に託しているというのも書き直さない本意だ。
 私たちが公害と戦い、公害追放のために水質の浄化のために洗剤、歯磨き粉、自動車の排気ガスの問題、そして、空に鳥が飛ぶ空を返せ、川に魚が泳ぐ川を返せ、海に人間が泳ぎ水遊びが出来る、豊饒な海の幸を、漁場を返せと叫んでいた時には見向きもしなかった文化人たちが公害の海を題材にして、さも真剣に公害問題を考えていますと言うように言い募り、また、劇を公演する軽薄な集団があった事には人間としていらだちを覚えた。
 その手の物は今も沢山いる。原発を今反対する、なぜ原発が作られる時に、今を理解していれば核廃棄物が人間を滅ぼすものだと分かっていれば、其の時点で反対の狼煙を上げるべきではなかったのか。これは卑劣で卑怯な行為であることに気がつかずに胸を張っている姿は情けなく腹が立った。
 それと一緒で皆其の起点ではなにも言わずに何もせずに、後で反対する、後出しの愚か者たちなのである。
 水軍は俄然と立ち上がるはずだったが、四国の真ん中にトンネルを作り瀬戸内海の水を入れ替えきれいな海にするという物語だった。
 人の心、公害、原発を起こった時に反対せずに今もの申すしかできない人の心、それは汚く澱んでいる。
 この台本は一つのパロディーでありファンタジーなのだが、其の頃の身の危険を感じながらもようやく書けた産物でもある。私は、人を信じて生きてきた、が、人の心の闇は深いと痛感した。そして、保身、と無責任、は人間の常なのかと自問する時がある。が、それでもなお人を信じ覚醒を夢見ている自分がいる。
 曇りの日、雨の日、風の強い日には工場から出る煤煙は大量に空のなかに拡散されている現状は今も目にする事が出来る。
 発展と人間の生活、その事によって自然は常に犠牲になりそれが人間の環境を破壊し人間を絶滅へと導いていることに慄いている。
 そんな日常にだんだんとならされて何も思わなくなることをまた恐れている。が、この作品を書いたという事でかろうじて立ち止まって見ている…。



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